臨床精神医学第52巻第1号

「新型うつ病」おわりました

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  • 大前 晋(虎の門病院)
  • 発行日:2023年01月28日
  • 〈抄録〉
    一般かかりつけ医や精神科外来診療所のもとには,日常生活上の欲求不満やストレスに関連した種々雑多な抑うつを訴える人たちがたくさん訪れる。Horwitzが称するところのストレス伝統である。このなかに軽症内因性うつ病(mild endogenous depression:以下MED)が存在する。その人たちは,仕事に限らず趣味や余暇の領域においても一貫して抑うつ的である。早い話が病気らしく見える。常識的で控えめ,社会秩序を重んじる几帳面で対他配慮の行き届いた人が多い。MEDを図として描き出すと,その地には新型うつ病の原型が見えてくる。その人たちは,仕事上の欲求不満やストレスなどをきっかけとして抑うつ・不機嫌となって,職場から逃げようとする。しかし趣味や余暇の領域では意欲たっぷりで,休業や保障などの権利はしっかり主張する。周囲からは,病気のせいでなく怠けやサボリ,わがままにしか見えない。しかもパーソナリティは成熟度が低く,規範や秩序あるいは他者への配慮に乏しい。このようにMEDと新型うつ病は,ストレス伝統における図と地として手に手をとってあらわれる。日本の精神医学学術界は,2014年以降うつ病の概念としてDSM-5収載のmajor depressive disorder(MDD)を採用して「うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害」と命名し,それまでのMED概念を棄却した。図としてのMEDが塗りつぶされたため,地としての新型うつ病の輪郭も見えづらくなった。結果として,2012年のNHKスペシャルや週刊文春で話題をさらった新型うつ病の流行は終結した。

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Declaration an end to the new type depression pandemic in Japan
大前 晋
国家公務員共済組合連合会虎の門病院