臨床精神医学第51巻第10号
うつ病のマイクロバイオーム研究─特に腸内細菌叢と病態メカニズムの関連について─
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- 小方 茂弘・他(帝京大学)
- 発行日:2022年10月28日
- 〈抄録〉
次世代シーケンサーや微生物ゲノム情報の進歩により,マイクロバイオームと疾患との関連を探る研究が盛んに行われるようになった。本稿では気分障害のうち,うつ病における腸内細菌叢について,その構成変化に関する検討,病態メカニズムとの関連について,最近の知見を中心に紹介した。腸内細菌叢の構成変化は,結果は必ずしも一致していないものの,短鎖脂肪酸を産出する菌(CoprococcusやBifidobacterium)のほか,Bacteroidesとの関連などが指摘されている。そうした菌の働きや短鎖脂肪酸が,うつ病と関連するとされるいくつかの経路,すなわち,視床下部-下垂体-副腎系,ミクログリア,トリプトファン代謝経路,セロトニン系,ドパミン系,GABA系などに影響を与えることを示唆する研究結果が報告されている。いまだに腸内細菌の臨床的意義は不明な部分が多いが,腸内細菌叢研究が,うつ病の理解や新たな治療に結び付くよう発展することが期待できる。
詳細
Microbiome research in depressive disorder –focus on gut microbiome and its relation with pathophysiology–
小方 茂弘 功刀 浩
帝京大学医学部精神神経科学講座