臨床精神医学第51巻第10号
気分障害をターゲットとしたメタボローム解析研究─九州大学病院でのトライアル─
電子書籍のみ
- 松島 敏夫・他(九州大学)
- 発行日:2022年10月28日
- 〈抄録〉
うつ病を始めとする精神疾患ではその疾患特性から自らの症状を隠し,自殺企図など,より重症化してからようやく精神医療につながることが少なくない。精神科以外でも実施可能な採血による血液バイオマーカーを開発することで,精神疾患の早期発見・早期介入につながることが期待される。九州大学病院気分障害ひきこもり外来では,血液メタボローム解析を用いた気分障害の病態解明・客観的バイオマーカー開発・治療法開発を進めている。本稿では,血液メタボローム解析について概説し,この外来での抑うつ,自殺,ひきこもりなどに関連した血液メタボローム解析研究とその成果を紹介する。筆者らはこれまで抑うつ重症度と3-ヒドロキシ酪酸,自殺とキヌレニン,ひきこもりとアルギニンとの関連を萌芽的に見いだしてきた。こうした研究の発展により精神疾患を生物学的で客観的に評価できるシステムが構築されることで,精神疾患の早期発見・早期介入の実現に加えて精神疾患への偏見解消が期待される。
詳細
Blood metabolome analysis focusing on mood disorders: investigation at Kyushu University Hospital
松島 敏夫*1,2 瀬戸山 大樹*3 加藤 隆弘*1,2
*1九州大学大学院医学研究院精神病態医学
*2九州大学病院精神科神経科・気分障害ひきこもり外来
*3九州大学病院検査部