臨床精神医学第50巻第10号

持効性注射剤の普及の遅れと精神科医の内服薬処方依存―治療構造論的視点からの考察―

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  • 三宅 浩司(大内病院)
  • 発行日:2021年10月28日
  • 〈抄録〉
    わが国では,第二世代抗精神病薬の持効性注射剤(Long-Acting Injection: 以下LAIと略)がその有用性にもかかわらず普及していないといわれる。本稿では,その原因を検討するため,外来診療にあたる精神科医の心理について治療構造論的視点から考察を行った。多くの精神科医は特有の治療構造の下で内服薬処方に依存する状態となっており,それがLAIの普及を妨げていると考えられる。この状態では薬剤調整に時間が割かれることで従来型の診療が維持されるが,LAIが導入されると教育訓練が不十分の精神療法に時間を使うことが余儀なくされる。結果,LAI導入は避けられ,内服薬処方依存が持続することになる。多剤大量処方がなかなか解消されないのは,その結末の一つであろう。対策として「第一水準の精神療法」の訓練システムの導入・普及と,精神療法に対する診療報酬の見直しが有用だと考えられた。LAIは患者中心の医療を促進し,精神療法の効果を増大させるポテンシャルを持つ。精神科医は多くの限界を抱えてはいるが,精神科医療の発展に向けて,それぞれがLAI導入によって変化する治療構造のあり方について検討を重ねることが必要である。

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Inhibited use of long-acting injection and psychiatrists’ over-dependence on oral medicine prescription: A consideration from the therapeutic theory perspective
三宅 浩司
医療法人社団大和会大内病院