臨床精神医学第50巻第10号
双極性障害維持期の持効性注射剤のエビデンス
電子書籍のみ
- 林 礼雄・他(福岡大学)
- 発行日:2021年10月28日
- 〈抄録〉
双極性障害は,再発率の高い疾患であることが知られており,治療早期から再発予防を意識した治療戦略が必須である。アドヒアランス不良が再発の主な要因として報告されている。2020年にアリピプラゾール持効性注射剤(ALAI)が「双極Ⅰ型障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」の適応を取得した。しかし,双極性障害の治療ガイドラインにおいて,ALAIの明確な位置づけを提示しているものは少ない。本稿では双極性障害の維持期における持効性注射剤(LAI)のエビデンスについて第二世代抗精神病薬を中心に整理した。第二世代抗精神病薬のLAIは,双極性障害の維持期の治療として有効であり,忍容性も高く,うつ病相よりも躁病相の予防に優れた効果を示した。躁病優位型でアドヒアランスに問題のある双極性障害の患者において,第二世代抗精神病薬のLAIは第一選択薬となり得ることが示唆された。
詳細
Evidence about the efficacy and safety of the long-acting injectables for the maintenance treatment of bipolar disorders
林 礼雄 堀 輝 川嵜 弘詔
福岡大学医学部精神医学教室