肝胆膵第83巻第4号
膵癌切除例のKRAS変異ctDNA解析とそのバイオマーカーとしての意義
電子書籍のみ
- 上村 健一郎,他(広島大学)
- 発行日:2021年10月28日
- 〈要旨〉
浸潤性膵管癌切除例における術前・術後のKRAS変異circulating tumor DNA(ctDNA)を解析し,そのバイオマーカーとしての意義を検討した.97症例の解析ではctDNA陽性例は,術前25%,術後28%であった.全生存期間中央値は,ctDNA術前陽性・術後陽性例では13.5か月であったのに対して,術前陰性・術後陰性例では52.6か月と有意に良好であった(p<0.001).また術前ctDNA陽性と術前CA19-9基準値以上の症例では全生存率中央値12.7か月と予後不良であったが,術前ctDNA陰性かつ術前CA19-9基準値未満例では全生存期間中央値81.2か月と有意に予後良好であった(p< 0.001).ctDNAはCA19-9値とは独立した予後因子であり,CA19-9値とのコンビネーションにより術前治療後の手術適応や予後予測における有望なバイオマーカーとなる可能性が示唆された.
詳細
KRAS mutation in circulating tumor DNA from resected pancreatic cancer and its significance as a biomarker
上村 健一郎*1 山口 拓朗*1 近藤 成*1 住吉 辰朗*1 岡田 健司郎*1 瀬尾 信吾*1 大塚 裕之*1 柴田 祥之*1 檜山 英三*2 村上 義昭*3 高橋 信也*1
*1広島大学大学院医系科学研究科外科学
*2広島大学自然科学研究支援開発センター
*3広島記念病院消化器センター