臨床精神医学第48巻第3号

精神医学的にみた漱石文学─神経衰弱者の擁護と救済─

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  • 高橋 正雄(筑波大学)
  • 発行日:2019年03月28日
  • 〈抄録〉
    夏目漱石の作品を精神医学的な観点から検討すると,次のような特性が認められる。①漱石文学には幻覚や妄想を思わせる表現が頻出する。②漱石の分身的な人物の多くは,細長型の体格をした神経衰弱者である。③漱石文学には,世間から神経衰弱視されている人物を擁護し,彼らの能力や人間性を評価しようとする姿勢が顕著である。④漱石文学では,神経衰弱者をその苦悩から救うためのさまざまな治療的な試みがなされる。漱石は幻覚や妄想に悩まされた神経衰弱者であるだけでなく,同時代の精神科医に先駆するすぐれた精神医学者・精神療法家・病跡学者でもあり,われわれは漱石の人生や作品を通じて,人は心病んでなおどれほどのことをなしうるのかを学ぶことができる。漱石は自らの身をもって精神障害者の有する能力や可能性を示した人であり,漱石文学は精神障害者の理解と共感と治療的な態度という点において,世界に冠たる文学ではないかと思われる。

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Psychiatrical study on the works of Soseki Natsume
高橋 正雄*1,2
*1 筑波大学大学院生涯発達科学専攻 
*2 筑波大学人間系