臨床精神医学第48巻第3号

アール・ブリュットの芸術哲学

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  • 吉岡 洋(京都大学)
  • 発行日:2019年03月28日
  • 〈抄録〉
    アール・ブリュットとは,精神疾患の有無にかかわらず行われる独特の自発的表現(とその作品)を意味するが,精神疾患がそのきっかけになることも少なくない。アール・ブリュットはこれまで,正規の美術教育なしに行われる美術活動と定義されてきたが,むしろ美術を制度的に美術たらしめている「歴史」に所属しない美術と考えた方が,より適切な定義ではないかと思われる。アール・ブリュットの作家たちは自らの作品の価値や保存に関心が薄く,アール・ブリュットを論じる際には制度的美術とは全く異なった視点が必要だと思われる。現実的にはアール・ブリュットは制度的な美術内部に取り込まれつつ,美術それ自体の起源における脱制度性や超歴史性を不断に喚起する特異点のごとき存在として大きな重要性を持つ。

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Philosophy of Art Brut
吉岡 洋
京都大学こころの未来研究センター