肝胆膵第79巻第2号

AFP<400 ng/mL症例におけるラムシルマブの有効性

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  • 青木 智子,他(近畿大学)
  • 発行日:2019年08月28日
  • 〈要旨〉
    REACH試験はラムシルマブによる肝細胞癌治療のうちbaseline AFP 400 ng/mL以上の症例だけではなくbaseline AFP が400 ng/mL未満の症例も含めた全症例を対象とした臨床試験である.したがってbaseline AFPが400 ng/mL未満の症例におけるラムシルマブの有効性を検討するにはREACH試験の結果を詳細に解析することにより可能となる.VEGFR-2活性と血清AFP値には強い相関があることは基礎実験でも示されておりAFP高値例にはVEGFR-2の活性亢進例が多いと考えられ,AFP 400 ng/mL以下であっても高値症例にラムシルマブが有効性を発揮する可能性が高い.実際REACH試験のサブ解析ではbaseline AFP 400 ng/mL未満の症例においても,無増悪生存期間(PFS)はラムシルマブ群で有意にプラセボより良好で抗腫瘍効果に優れている.また,全生存期間(OS)はbaseline AFPが基準値の1.5倍以上の場合に有意に延長されていた.同様にREACH試験のサブ解析ではbaseline AFP値が10 ng/mL以上でもラムシルマブのプラセボに対するハザード比は0.8を十分に下回っており有意な予後の延長がみられた.したがってbaseline AFP 400 ng/mL未満の症例においても,ラムシルマブの効果は十分に期待できることは確かである.AFPは予後の悪い集団のバイオマーカーであるが,最初のREACH試験が失敗したのはAFPの低い予後のよい集団が多く含まれており,結果としてAFP 400 ng/mL未満の症例に多くの後治療が入ったためにプラセボ群の予後が伸びたことが原因と考えられる.したがってAFPが400 ng/mL未満の症例でもOS延長効果を含め有効性は期待できるものと考えられる.ただし,本邦では「がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400 ng/mL以上の切除不能な肝細胞癌」に対してのみラムシルマブの保険適応が認められており,この点は十分に留意して保険診療にあたる必要がある.

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Efficacy of ramucirumab in patients with AFP levels less than 400 ng/mL
青木 智子 工藤 正俊
近畿大学医学部消化器内科