臨床精神医学第45巻第11号

生前に一度も苦痛を訴えなかった局在関連性てんかんの1例

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  • 山口 成良(松原病院)
  • 発行日:2016年11月28日
  • 〈抄録〉
    13歳時に初めてけいれん発作が出現し,てんかんと診断され,料理中に右上肢を火傷した。3人の挙子をもうけるが,いずれも生後2週間以内に敗血症で死亡し,50歳過ぎてから下部直腸癌切除術を受け,その後転移性膵腫瘍がみつかり,最後はケア病棟で亡くなられた,局在関連性てんかんの1例を報告した。受診時,いつも笑顔をたやさず,苦痛を訴えることもなく,愚痴もこぼされなかった。考察として,上顎癌で33回の手術を受けた,精神分析の創始者フロイトの例をあげた。「はっきりと考えられぬくらいならば,苦痛の中で考えた方がましだ」と言って,亡くなる直前まで鎮痛剤の使用を嫌った。見舞いにきた友人に,苦痛や苛立ちを全く示さず,運命の完全な受容と,運命に対する諦念のみを示した。

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A case of localization-related epilepsy who never complained her sufferings whole life
山口 成良
社会医療法人財団松原愛育会松原病院