臨床精神医学第49巻第9号
コロナ蔓延(自粛生活)と認知症
電子書籍のみ
- 橋本 衛・他(大阪大学)
- 発行日:2020年09月28日
- 〈抄録〉
COVID-19の蔓延を封じ込めるためには,対人接触の制限,移動の制限,ロックダウン,発症者だけでなくウイルス陽性者の隔離が有効とされているが,このような社会的孤立は,高齢者の身体疾患やメンタルヘルスの問題に大きな影響を与えることがわかっている。さらに,認知症者は,対人接触の制限,移動の制限,手洗いやマスクの着用なども含めて自分から感染予防の対策を取ることが困難であり,介護者の負担が増大している。コロナ蔓延による緊急事態宣言下,当初にわれわれが実施した検討では,認知症者については独居,同居関係なく心理的ストレスを感じていたり,睡眠障害や食欲の変化などの身体的不調を呈していた者は少数であった。むしろ健常対照者として設定した配偶者の方が強く心理的ストレスを感じていた。前頭側頭型認知症はアルツハイマー病と比べて感染予防行動(社会的距離,手洗い,ステイホーム)を取ることが難しいことが明らかとなった。
詳細
Dementia in the COVID-19 pandemic
橋本 衛*1 鈴木 麻希*2 池田 学*1
*1 大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室
*2 大阪大学大学院連合小児発達学研究科行動神経学・神経精神医学寄附講座