肝胆膵第80巻第5号
SVR後の門脈圧亢進症における脾臓の役割
電子書籍のみ
- 川中 博文,他(国立病院機構別府医療センター)
- 発行日:2020年05月28日
- 〈要旨〉
脾摘術を施行したウイルス性肝硬変295例(HBV31例,HCV264例,Child-PughA121例,B148例,C26例)を対象とし,脾摘術の長期成績について検討した.脾摘術後10年生存率は,B型68%,C型66%,Child-Pugh A78%,B62%,C42%であった.術後累積出血率は10年10%であったが,静脈瘤非合併例では,de novo静脈瘤出血は10年2%であった.C型肝硬変226例における累積肝発癌率は10年48%,SVR達成群では10年20%であった.SVR達成例の10年生存率はChild-Pugh A 100%,B 92%と非常に良好であった.また,脾摘前後で,門脈血流量や肝内門脈血管抵抗は低下し,門脈圧は25%低下した.門脈圧の低下率は,Child-Pugh B 例や脾重量500 g以上で有意であった.以上より,肝硬変症において,脾機能制御は非常に重要であり,特にSVR達成例では予後は極めて良好であった.DAA治療によりSVRが達成可能となった現在,非代償性肝硬変であっても,低侵襲に脾摘術を施行し肝機能が改善した後DAA治療を行うことで,将来の肝移植を回避できる可能性が示唆された.
詳細
Role of spleen in liver cirrhosis with portal hypertension and therapeutic implication of splenectomy in an era of DAA
川中 博*1,2 赤星 朋比古*2 長尾 吉泰*2 吉住 朋晴*2
*1国立病院機構別府医療センター臨床研究部,消化器外科
*2九州大学大学院消化器・総合外科