肝胆膵第81巻第4号
- 特集/肝細胞癌治療のパラダイムチェンジ−進化する薬物療法2020 Update PartⅠ−（免疫療法）
- 発行日：2020年10月28日
- ＜企画趣旨＞
2019年ESMO Asiaにてアテゾリズマブ + ベバシズマブ併用療法のpositive 結果が報告され，いよいよ日本においても免疫チェックポイント阻害剤（+アバスチン）が使用できる状況となってきた．このIMbrave150試験は第１回目の中間解析にてOS， PFS， ORR， QOL，有害事象などすべてのendpointにおいて有意に対照薬を上回る結果を示したため市販後は進行肝細胞癌に対する薬物治療の第一選択となることは間違いない．また現在Early, Intermediate, Advancedの全てのstageで免疫チェックポイント阻害剤を含む第相臨床試験が進行中であり，今後、肝細胞癌の治療戦略は大きく変わっていくものと考えられる．肝細胞癌に生存延長効果が認められる薬物がこれだけ多く登場すると最も重要なことは肝予備能の維持である．日本においては90%以上がEarly stageもしくはIntermediate stageの段階で肝癌が検出され治療される．従って特にIntermediate stageの段階でrisk benefit (奏効と肝予備能低下)を見極めてTACE overuseで肝機能を落とさないことが最も肝要になってきている．本特集では，さまざまな免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験のサブ解析や現在進行中のPhaseb試験やPhase試験を総括することにより今後の肝細胞癌治療のパラダイムチェンジを総括したい．
詳細
〈目次〉
〔巻頭言〕失敗と挫折 京都大学名誉教授 本庶 佑
・ 特別座談会
免疫療法の登場により肝細胞癌の治療は新たなステージに 工藤 正俊（近畿大学）/池田 公史（国立がん研究センター東病院）/小笠原 定久（千葉大学）/坂元 亨宇（慶應義塾大学）
・ 肝細胞癌の免疫療法総論：現状と今後の展開
免疫チェックポイント阻害剤の単剤治療はなぜ限界があるのか 近畿大学 工藤 正俊
WNT/β-catenin変異と免疫チェックポイント阻害剤の治療抵抗性−EOB-MRIのbiomarkerとしての可能性− 近畿大学 工藤 正俊
アテゾリズマブ＋ベバシズマブ併用療法登場後の進行肝細胞癌に対するシークエンシャル治療の今後 近畿大学 工藤 正俊
・ 免疫療法の基礎
免疫微小環境の分類と免疫療法の効果予測 慶應義塾大学 紅林 泰，他
肝細胞癌における微小免疫環境と免疫チェックポイント阻害剤 近畿大学 西田 直生志，他
・ 免疫チェックポイント阻害剤による単剤治療
進行肝細胞癌に対するニボルマブ第相試験（CheckMate 459試験）のupdate results 北海道大学 小川 浩司，他
KEYNOTE-240試験（ペムブロリズマブ）の総括 和歌山県立医科大学 井田 良幸，他
ニボルマブのChild-Pugh Bにおける有効性・安全性 近畿大学 上嶋 一臣
Tislelizumab（抗PD-1抗体）の第Ⅰ相試験結果 岩手医科大学 黒田 英克，他
・ 免疫チェックポイント阻害剤と抗VEGF抗体・TKIとの併用療法
ICI-Anti-VEGF/TKI併用療法のrationale 近畿大学 盛田 真弘，他
アテゾリズマブ＋ベバシズマブ併用療法（IMbrave 150）の総括 国立がん研究センター東病院 池田 公史
ICI-Anti-VEGF/TKI併用療法のPhaseb試験のupdate results 国立がん研究センター中央病院 佐竹 智行，他
・ 免疫チェックポイント阻害剤同士の併用療法
抗PD-1/PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体併用のrationale 近畿大学 南 康範，他
ニボルマブ＋イピリムマブ併用療法CheckMate 040試験の総括 国立がん研究センター中央病院 近藤 俊輔
デュルバルマブ＋tremelimumab併用療法のupdate（Study 22） 杏林大学 古瀬 純司
・ 現在進行中の第Ⅲ相臨床試験の概要
アジュバント治療開発の各種試験デザイン 金沢大学 山下 竜也，他
TACE併用試験の各種試験のデザイン（LEAP-012，CheckMate 74w） 広島大学 河岡 友和，他
進行肝細胞癌の一次治療 第Ⅲ相試験（RATIONALE-301，HIMARAYA，CM-9DW，LEAP-002，COSMIC-312）の概要 杏林大学 岡野 尚弘，他