臨床精神医学第47巻第1号
精神医学・精神医療における利益相反─研究・教育・診療の視点から─
電子書籍のみ
- 齊尾 武郎・他（SMBC日興証券健康管理室；フジ虎ノ門整形外科病院）
- 発行日：2018年01月28日
- 〈抄録〉
【背景】近年，医学研究では利益相反（conflict of interest：COI）管理体制の整備が進んでいる。【目的】医学・医療のCOIに関する情報を整理し，精神医学・精神医療での課題を示すこと。【方法】COIに関し，研究・教育・診療の視点から非系統的文献レビューを行った。【結果】COI管理は医学研究から申告・開示・管理体制の整備が進み，日本精神神経学会がCOI指針・細則を制定したが，課題も多い。医学教育では，患者ケアよりも教育を優先してはならず。また，製薬企業の影響に留意する必要がある。診療においては，医師の責務に反して，不当に金銭的利益を得てはならない。精神医療では，最近の精神保健指定医試験における不正事件や非自発的入院の家族同意など，精神保健福祉法に関連したCOI問題があるが，広い意味では長期入院や多剤処方といったわが国の精神医療の問題点もCOIに照らして検討する必要がある。【考察】COIの考え方は医学研究における手続き的な整備により周知されるようになったため，難解・煩雑との印象を受けやすいが，多くの場合，見識ある一般市民としての感性と自身の責務に忠実であれば，判断に迷うことは少ない。精神医療では，法の規定がCOI上の問題の淵源となっているが，専門職としての自律性で解決すべき課題も大きい。【倫理的配慮】本発表は公表された文献のレビューであり，個人を特定できる情報を含まない。
詳細
Conflict of interest in psychiatry: research, education and clinical practice
齊尾 武郎＊ 栗原 千絵子＊＊
＊SMBC日興証券健康管理室；フジ虎ノ門整形外科病院内科・精神科
＊＊国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所