臨床精神医学第47巻第1号

精神科領域の脳深部刺激療法に関する倫理的諸問題

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  • 栗原 千絵子・他(放射線医学総合研究所)
  • 発行日:2018年01月28日
  • 〈抄録〉
    背景;精神科領域における脳深部刺激療法(DBS)は,強迫性障害(OCD),大うつ病性障害(MDD)(いずれも難治性)に対し海外で多数実施され,倫理的問題もさまざまに検討されてきた。目的;精神科領域におけるDBSの倫理的諸問題を明らかにする。方法;非系統的文献レビュー。結果;以下の状況が見いだされた。(1)難治性OCD,MDDでは少数例での著効が報告されているが,MDDでは2件の多施設共同ランダム化比較試験で有効性が認められず中止された。(2)精神疾患に対する定位的脳神経外科治療に関する国際ガイドラインは,重症例に対する厳格な判断能力評価を求め,治療目的以外の政治的・法律的・社会的目的による利用を禁じている。(3)統合失調症や攻撃性に対するDBSが近年試みられている。(4)近年“closed loop DBS”という概念が提唱されている。(5)日本ではOCDに対する臨床試験が計画されている。結論;精神科領域DBSに特有の問題は,この方法が社会的,政治的目的に利用される可能性があることであり,国際的研究者共同体はこれを禁じている。他の困難な問題は同意能力の減弱した人に正規のインフォームド・コンセントを求める点であり,これは精神科に本質的な問題である。

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Ethical considerations for deep brain stimulation (DBS) in psychiatry
栗原 千絵子* 齊尾 武郎**
*国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所
**SMBC日興証券健康管理室;フジ虎ノ門整形外科病院内科・精神科