臨床精神医学第47巻第1号
精神科領域での薬物によるエンハンスメントの脳神経倫理
電子書籍のみ
- 美馬 達哉(立命館大学)
- 発行日:2018年01月28日
- 〈抄録〉
精神科領域で用いられる薬物のエンハンスメント目的での使用が,21世紀になってとくに問題化してきた。本稿では,その現況と倫理について脳神経倫理の立場から論じた。エンハンスメントとは患者や障害者に対するトリートメント(治療)ではなく,健常者を対象にパフォーマンス改善のために生物医学的介入を用いることを意味する。たとえばスポーツでのドーピングも含む幅広い概念である(身体的エンハンスメント)。向精神薬の場合は精神機能に作用するため認知的エンハンスメントと呼ばれる。また,医薬品規制という観点からは処方薬の濫用とみることもできる。ここでは,エンハンスメントとトリートメントを区別する古典的な考え方を紹介してその限界について述べ,より道徳哲学に近いエンハンスメントとアチーブメント(達成)を対比する議論を概説する。
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Neuroethics of drug-induced enhancement in psychiatry
美馬 達哉
立命館大学先端総合学術研究科