臨床精神医学第47巻第2号
グローバリゼーションにおける依存症の治療実践-日米英の3か国を中心とした治療の現状と発展-
電子書籍のみ
- 田中 増郎・他(高嶺病院)
- 発行日:2018年02月28日
- 〈抄録〉
近年の依存症治療の最大の変化はハーム・リダクションの導入であろう。これは,『違法かどうかにかかわらず,精神作用性のあるドラックについて,必ずしもその使用量は減らなくとも,その使用により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを目的とする政策,プログラム,そして実践』と定義される施策であり,治療的にも重要である。物質の使用状況にこだわらず関連する害の低減を目指しており,断酒・断薬のみの推奨や司法の厳重な処罰よりも,社会的費用の低減がされるという報告もされている。というのも,その理念には,依存症が道徳の問題ではなく医療の問題であるという考え方が根底にある。欧州を中心に広がっており,米国でも依存症を偏見解消の対象とする動きが出ている。日本でも,今年作成されたアルコール・薬物使用障害の診断・治療ガイドラインに,このハーム・リダクションが盛り込まれ,臨床の転換期を迎えている。
詳細
The current status of substance use disorder treatment: comparison of the United States of America, United Kingdom and Japan
田中 増郎1,2) 長 徹二3) 橋本 望4) 佐久間 寛之5)
1)高嶺病院
2)慈圭病院
3)三重県立こころの医療センター
4)岡山県精神科医療センター
5)久里浜医療センター