臨床精神医学第47巻第2号

共感性から読み解くグローバリゼーションと臨床精神医学

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  • 阪上 優・他(京都大学)
  • 発行日:2018年02月28日
  • 〈抄録〉
    グローバリゼーションによる地球規模の相互依存関係は,決定的な深化を遂げつつある。しかしその実態は,世界が一体化していく調和的な課程ではなく,対立や不平等を抱え込んだまま,画一化と多様化が混在するいびつな形で進展している。グローバリゼーションの不均等発展がもたらす混迷と不安は,日常の精神科臨床にも暗い影を落としている。このような現代社会の課題を読み解くカギとして,近年,「共感性」が注目されつつある。その定義はしばしば曖昧だが,本稿では,共感性を情動的側面と認知的側面に分けて検討を試みた。共感性は日常生活において多様な役割を果たす一方で,必ずしも向社会的行動につながるとは限らない。 自主独立と他者志向との間に生じる矛盾と葛藤は,不安や強迫,抑うつなどの病態をとりながら日常臨床において遭遇される。また,発達障害者の共感性に注目した研究では,発達障害者との間のコミュニケーション不全を障害者に帰属させるのではなく,身体的・認知的特性の違いによって本来発揮される共感性が阻害されたと考える類似性仮説が議論に広がりを見せている。一方,触法精神医学の分野では,加害者に共感性の不定形発達,また共感性の悪用がみられる可能性が示唆され,他者理解や共感性を向上させるトレーニングが研究されつつある。グローバリゼーションの深化により,認知的共感が情動的共感を凌駕しつつある現代において,サステナブルな人間社会をいかにして構築していくか,日常臨床を通じて,われわれの英知が求められている。

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Globalization and clinical psychiatry. Overview with lelation to empathy
阪上 優1,2) 近藤 圭一郎3)
1)京都大学環境安全保健機構健康科学センター
2)京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学講座
3)京都大学医学部医学科