臨床精神医学第46巻第8号
- 特集/精神障害とこだわり
- 発行日:2017年08月28日
- 〈企画趣旨〉
臨床においては,例えば,「(前頭側頭葉型)認知症なのか? それとも本来の自閉スペクトラム症圏の性格傾向が先鋭化したのか?」と迷うケースや,「本来自閉スペクトラム症圏だったのか? それとも外傷による脳損傷によるものなのか?」と診断・判断を迷うケースが少なからずある。また強迫症は言うまでもないが,うつ病や摂食障害なども「こだわり」が強い例が少なくない。
広く臨床を眺めてみると,「こだわり」を呈する精神障害は少なくない。DSM-5作成時には「強迫スペクトラム障害」という疾患概念が検討されたらしいと聞いているが,「こだわりスペクトラム」という概念もあってよいのかもしれない。「こだわり」は,「強迫的」に似たものとして扱われることもあるが,より自我親和的な思考や行動を表しているようでもある。しかし,より能動的な「こだわり」もあり,多様である。本特集では,さまざまな精神疾患における「こだわり」について,その表現型や理解の仕方,治療や支援について記していただき,「こだわり」について考えてみたい。
「こだわり」に限局すると執筆しにくいと思いますので,「こだわり」にあまりこだわらず,ご自由にお書きいただきたいとと思います。
詳細
〈目次〉
精神科臨床と「こだわり」 (川崎医科大学)青木 省三・他
自閉スペクトラム症とこだわり (順天堂大学)広沢 正孝・他
認知症とこだわり─前頭側頭型認知症を中心に─ (浅香山病院)繁信 和恵
脳損傷とこだわり (京都大学)上田 敬太
うつ病とこだわり (自治医科大学)阿部 隆明
統合失調症とこだわり (帝塚山学院大学)深尾 憲二朗
強迫性障害とこだわり (九州大学)中尾 智博
身体表現性障害(身体症状症)におけるこだわり (兵庫医科大学)松永 寿人
摂食障害とこだわり (白梅学園大学)西園マーハ文
てんかんとこだわり (岡山大学)山田 了士
アルコール使用障害(依存)とこだわり (川崎医科大学)原 正吾・他
シリーズ/現代精神医学の視点・論点(第3シリーズ)
SSRI/SNRI 世代の私が目指す目に見えるリエゾン精神医療 (市ヶ谷ひもろぎクリニック)渡部 芳
研究報告
新規抗うつ薬で強い副作用が出現し低用量のイミプラミンへの切り替えが有効であった重症うつ病の1症例 (大阪市立大学)門脇 彩・他
最重症剖検ナルコレプシー症例 (鈴泉クリニック)鈴木 二郎