臨床精神医学第50巻第5号
無意識の優越感が抑うつ症状に果たす役割
電子書籍のみ
- 山田 真希子・他(量子科学技術研究開発機構)
- 発行日:2021年05月28日
- 〈抄録〉
優越の錯覚とは,自己の能力や性格を過大評価する傾向を指し,未来への希望や目標に向かう動機づけとなると考えられている。一方,抑うつの現実主義として知られるように,抑うつ状態においては現実的に自分自身を捉えてしまう傾向があり,優越の錯覚を持つことは心の健康に重要な役割を果たすと考えられている。しかし,内観に基づく優越の錯覚が,自ら意識することのできない潜在的な優越感とどのように関係し,抑うつ症状と関連するかは不明である。本研究では,健常者を対象に,優越の錯覚と潜在的優越感を測定し,抑うつに関わる絶望感と内発的動機づけに関わる認知欲求との関連を検討した。結果,優越の錯覚が潜在的優越感よりも低く,その不一致度が大きいほど,絶望感が高く,認知欲求が低いことが判明した。内観による優越の錯覚が低い一方で無意識な優越感が高い状態は,絶望感や意欲低下など抑うつ症状の予測因子となり得る可能性が示唆された。
詳細
The effect of discrepancy between explicit and implicit superiority on depressive symptoms
山田 真希子*1,2 伊里 綾子*2,3
*1量子科学技術研究開発機構量子生命科学領域量子認知脳科学グループ
*2量子科学技術研究開発機構脳機能イメージング研究部脳とこころの研究グループ
*3埼玉学園大学人間学部