臨床精神医学第50巻第3号
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
電子書籍のみ
- 高橋 晶(筑波大学)
- 発行日:2021年03月28日
- 〈抄録〉
COVID-19のリエゾン精神面での診立てと対応としては,①COVID-19自体の脳への直接影響としてのせん妄などの器質的な脳への影響,②間接的,環境変化に伴う抑うつ,不安等の精神・心理症状への対応,③感染症に伴う偏見,誹謗中傷などの社会的影響への診立て,対応が考えられる。個人的な感染症や身体疾患に対する心的外傷がある可能性,自身の,そして家族の健康状態への影響など,表出される精神・心理的症候に関わる因子が複雑に関わっている。これを診立てて,紐解いていく。その上での診断となるが,うつ病の診断であれば,一般的なうつの治療につながることがあるが,多くの場合は適応障害もしくは診断基準を満たし得ないグレーゾーンであることがある。その場合,一般的な薬物療法を行うことではなく,不安などの精神症状に対応したり,ノーマライゼーションを行うことで改善を促すことにつながる。災害精神領域では,グレーゾーンの対応が求められ,リエゾンにおいても,診立てをすることがこのような異常事態における精神医療保健としては重要と考える。また医療者が疲弊して,身体的・精神的に不調をきたしたり,不安・恐怖によって心身の不調をきたす。医療者・支援者支援をすることも必要である。
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Liaison psychiatric diagnosis and response to novel coronavirus disease-2019
高橋 晶
筑波大学医学医療系災害・地域精神医学