肝胆膵第85巻第3号
TACTICS試験の最終解析とその結果の解釈
電子書籍のみ
- 上嶋 一臣,他(近畿大学)
- 発行日:2022年09月28日
- 〈要旨〉
TACTICS試験は,TACEにソラフェニブを併用することによる臨床的有効性を探索する多施設共同ランダム化比較第Ⅱ相試験である.2010年より開始したこの試験は,2020年にその最終結果が報告された.ソラフェニブ併用によるPFSの改善効果は示されたが,残念ながらOSは統計学的には有意差が示されなかった.一般的に後治療が行われるようなステージを対象とした臨床試験では後治療の影響によりpost progression survivalが延長し,得られたbenefitは薄まることでOSに差がつきにくくなるとされている.しかしながら,本試験で得られた中央値で5.4か月の生存期間延長効果は,統計学的には差がなくとも臨床的には非常に意味のある結果であると解釈できる.早期からTACE治療に分子標的治療薬を介入させることで,stage progressionを抑制し,また分子標的治療薬による腫瘍増殖抑制によりon demand TACEの回数を減らすことで肝予備能維持につながったことが示唆される結果であった.
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Final analysis of TACTICS trial and interpretation of its results
上嶋 一臣 工藤 正俊
近畿大学医学部消化器内科