肝胆膵第85巻第3号
アテゾリズマブ・ベバシズマブはimmune cold tumor をimmune hot tumorに変えるか
電子書籍のみ
- 工藤 正俊(近畿大学)
- 発行日:2022年09月28日
- 〈要旨〉
Cancer immunity cycleにおいてVEFGは血流中を流れるCD8陽性T細胞の腫瘍内浸潤を妨げる.その主な要因としてはVEGFがFAS ligand を誘導し,CTLをアポトーシスに陥らせること,またICAM-1やVCAM-1といった接着因子を低下させることによりCTLの血管内皮への固着や腫瘍への遊走能を低下させることなどが知られている.さらにはCXCR3のリガンドであるCXCL9,10,11などのケモカインが腫瘍内樹状細胞から放出されることを妨げることによってもCTLは血管内皮に接着できず腫瘍内浸潤が妨げられる.特に,これはimmune coldな腫瘍において頻繁に起こる現象である.これに対して抗VEGF抗体を与えるとCTLのアポトーシスが抑制されICAM-1,VCAM-1の減少も改善されることにより,CTLの血管内皮への固着,遊走能が亢進される.さらにCXCR3に対して血管内皮への固着を促進させるCXCR3のリガンドであるCXCL9が抗VEGF抗体ならびに抗PD-L1抗体によって腫瘍内に存在するCD8陽性T細胞から IFN-γの放出を促し,樹状細胞からCXCL9,10が血流中のCTLのCXCR3を介して血管内皮へCTLを固着させることにより効率的にCTLの腫瘍内浸潤が誘導される.このような機序によりアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法はimmune coldな腫瘍でもその一部分においてはimmune hotな腫瘍に変える可能性がある.
詳細
Can atezolizumab plus bevacizumab combination therapy change immune cold tumor to
immune hot tumor?
工藤 正俊
近畿大学医学部消化器内科