肝胆膵第81巻第3号
肝硬変に合併する門脈血栓症に対するAT-Ⅲ製剤治療
電子書籍のみ
- 川部 直人，他（藤田医科大学）
- 発行日：2020年09月28日
- 〈要旨〉
肝硬変では凝固・抗凝固のインバランス状態となっており，抗凝固因子であるAT-Ⅲ低下が門脈血栓症の大きな一因である．国内第Ⅲ相臨床試験でAT-Ⅲ製剤投与群はプラセボ群に比して有意に奏効率が高く，出血に関する事象を含め合併症もプラセボ群とほぼ同様であり，AT-Ⅲ製剤の良好な効果と安全性が証明された．その結果，2017年8月AT-Ⅲ製剤について，「アンチトロンビンⅢ低下を伴う門脈血栓症」の適応追加が承認された．AT-Ⅲ製剤治療は門脈血栓症に対して唯一保険適用が認められた薬物療法であり，AT-Ⅲ活性70％以下の門脈血栓症では第一選択とすべき治療法である．ただし治療後の血栓再発もあり，再発予防にはそのほかの維持療法を検討する必要がある．
詳細
Antithrombin III treatment for portal vein thrombosis in patients with cirrhosis
川部 直人 吉岡 健太郎 葛谷 貞二 中岡 和徳 中野 卓二 宮原 良二 橋本 千樹 廣岡 芳樹
藤田医科大学消化器内科学Ⅱ