臨床精神医学第48巻第1号
アルコールと抑うつ状態
電子書籍のみ
- 長 徹二(三重県立こころの医療センター)
- 発行日:2019年01月28日
- 〈抄録〉
アルコールと抑うつ状態との関係は多様で複雑であり,アルコールの直接的な脳への作用だけにとどまらず,生活上の問題やストレス負荷,睡眠障害,そして,もともとの性格傾向も抑うつ症状には関与することも多い。そのため,明確な因果関係を証明することは困難であるが,アルコール使用障害を抱える人と,抑うつ状態を抱える人における共通点はかなり多い。表面に現れたアルコール関連問題や抑うつ状態だけに目を奪われることなく,その根底に潜む生きづらさに目を向けることが肝要である。治療においては,二つの疾患を同時に治療することが大切であるが,両者に共通する根幹として,心理的に抱える孤独やストレス脆弱性や対処の拙劣さについて十分に把握し,その過程を共感することが大切である。そして,達成可能な具体的な目標に向かって,決して焦らず,主体性を重視し,些細な変化を認め続けて,信頼できる関係性を少しずつ構築していくことが重要である。
詳細
Alcohol and depression
長 徹二
三重県立こころの医療センター