臨床精神医学第52巻第2号
向精神薬は自動車運転技能に影響を与えるのか?─強迫症患者の治療を例として─
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- 尾崎 紀夫(名古屋大学)
- 発行日:2023年02月28日
- 〈抄録〉
強迫症とうつ病が併発した症例の治療経過において,再発予防のため向精神薬(フルボキサミン)の継続投与が必要であった。フルボキサミンの添付文書には自動車運転禁止に関する記載が含まれ,本症例は就労復帰後,運転を要する業務に従事することが困難となった。筆者は向精神薬による治療を受けた精神疾患患者の自動車運転技能は如何なのかというクリニカルクエスチョンを設定した。この疑問を解決すべく,精神疾患および向精神薬が自動車運転技能に与える影響を運転シミュレータ(DS)により検討してきた。また文献調査結果等を取り入れて新たにDSを作製して,信頼性・妥当性・感度分析の要件を確認した。さらに「向精神薬が自動車の運転技能に及ぼす影響の評価方法に関するガイドライン(案)」の発出につなげた。今後,精神疾患や向精神薬が運転技能に与える影響が適切に評価され,その結果として科学的証左が蓄積され,公共の安全と患者個人の権利が調和した社会の実現につながることが期待される。〈抄録〉
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Do psychotropic drugs affect driving skills? An example of treatment of patients with obsessive-compulsive disorder
尾崎 紀夫
名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学
英文 著者 所属