肝胆膵第81巻第6号
COVID-19感染症まん延時の肝胆膵外科-提言と現状-
電子書籍のみ
- 調 憲,他(群馬大学)
- 発行日:2020年12月28日
- 〈要旨〉
COVID-19感染症のまん延時においては不急の手術は延期される可能性がある.肝胆膵領域でも急性胆嚢炎に対しても必要があれば経皮経肝的な胆嚢ドレナージが検討されるであろう.症状の軽い胆石症は手術の延期が検討されるであろう.一方,ほとんどの癌の手術や緊急性の高い肝移植は安易に延期されるべきではない.しかしながらCOVID-19感染症のまん延下の状況下では手術延期を考慮せざるを得ない場合がある.日本消化器外科学会が今年6月に行った施設アンケート調査によれば,40%を超える施設が消化器癌に対する手術制限があると回答した.前述のアンケート調査の約30%の施設が優先されるべき消化器癌手術があるとし,癌種としては膵癌が最も多かった.進行が速い,手術以外の代替療法に乏しい癌種ではCOVID-19感染症まん延下でも十分な感染対策のうえ,予定通り手術が施行されるべきと考えられている.レシピエントの生命に関わる肝移植も同様である.一方で比較的悪性度の低い膵神経内分泌腫瘍や肝細胞癌の一部は延期やラジオ波腫瘍焼灼療法への方針変更,薬物療法を用いたbridgingなども考慮される.病院の医療資源や市中感染の頻度は刻一刻と変化していくため,治療について頻回に見直し,患者への不利益を最小限にするべく衆智を集めて対応することが望まれる.
詳細
The effects of COVID-19 pandemic on surgery of patients with hepato-biliary and pancreatic Diseases
調 憲 久保 憲生
群馬大学大学院医学系研究科・総合外科学講座・肝膵外科分野