臨床精神医学第45巻第9号
研究報告 アルツハイマー病患者におけるFrontal Assessment Battery(FAB)の遂行機能障害評価尺度としての妥当性の検討
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- 田口 万里子・他(新潟医療福祉大学)
- 発行日:2016年09月28日
- 〈抄録〉
【背景】Frontal Assessment Battery(FAB)は認知症診療で汎用されているが,認知症性疾患においてFABの結果が遂行機能の評価として妥当性があるのかという点は改めて検証する必要がある。【目的】アルツハイマー病(AD)患者を対象として,FABと遂行機能が影響する他の認知機能課題および日常生活上の遂行機能との関係を検討する。【対象】数唱,MMSE,Alzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS),FAB,Rey複雑図形模写課題およびClinical Dementia Rating(CDR)を施行したAD患者で,MMSE得点が14点以上かつ教育歴が6~9 年の114 症例。【方法】FAB得点と患者属性,疾患属性,認知機能属性, ADLの評価尺度との関係を単相関分析で検討した。そして,認知機能障害の全般重症度の要因を除外するために,①FAB得点,②MMSE得点,③FAB得点と有意な単相関が得られた項目のいずれかの3変量による重相関分析を施行した。【結果】重相関分析では,認知機能障害の全般重症度の影響を除外しても,FAB得点と数唱逆唱,ADASの単語再生と観念行為,Rey複雑図形模写得点との間に有意な関係がみられた。一方,CDRのSum of boxesや個別の下位項目などのADLの評価尺度とFAB得点との間に有意な関係はみられなかった。【考察】AD患者においても,FABと遂行機能が影響する他の認知機能課題はある程度相関していたが,同時に,ADL上の遂行機能障害を十分には予測できていない可能性が示唆された。今後日常生活上の遂行機能障害を予測するためにFABと併用すべき神経心理学的テストの検討が必要である。
詳細
Validity of the frontal assessment battery(FAB)for executive dysfunction in Alzheimer's disease
田口 万里子1) 加藤 梓1,2) 佐藤 卓也3) 今村 徹1,2,4)
1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)新潟医療福祉大学大学院保健学専攻言語聴覚学分野
3)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
4)新潟リハビリテーション病院神経内科