肝胆膵第79巻第6号
膵神経内分泌腫瘍のゲノム異常とプレシジョン・メディシンへの応用
電子書籍のみ
- 大木 理恵子（国立がん研究センター研究所）
- 発行日：2019年12月28日
- 〈要旨〉
さまざまな臓器に発症する神経内分泌腫瘍（NEN）は，希少がんであるが故に研究が十分に進んでいない．膵神経内分泌腫瘍（PanNEN）はランゲルハンス島に由来するNENであり，NENのなかでは研究が最も進んでいる．ゲノム解析も進められており，解析の結果，MEN1経路，DAXX/ATRX経路，PI3K-Akt-mTOR経路の三つの主要な経路に加えて，クロマチンリモデリング，DNA損傷修復経路に関わる遺伝子の変異が報告されている．一方，筆者らはAkt抑制因子をコードするPHLDA3遺伝子をPanNENのがん抑制遺伝子として同定している．PanNENはNENのなかでも特に予後が悪く，高頻度に遠隔転移が認められる．今後ゲノム解析やPHLDA3研究による成果がPanNENのプレシジョン・メディシンに応用されることが期待される．
詳細
Genomic abnormalities of pancreatic neuroendocrine tumors and their application to precision medicine
大木 理恵子
国立がん研究センター研究所基礎腫瘍学ユニット