臨床精神医学第47巻第11号
精神鑑定と責任能力判断のブラックボックスを開け放つ
電子書籍のみ
- 岡田 幸之(東京医科歯科大学)
- 発行日:2018年11月28日
- 〈抄録〉
精神鑑定は精神医学を代表して社会との関わりのフロントラインに立つ仕事であるが,社会は精神鑑定について「病気だからといって減刑や無罪にするのはおかしい」か「病気なのに刑罰を与えるのはおかしい」のどちらかをもって批判する。前者に対しては,刑法第39条と刑事責任能力についての再考によって,後者については矯正精神医療の拡充によって解決することを提言する。このように精神鑑定に関する大きな問題が未解決のままであった原因は,精神鑑定と責任能力判断がブラックボックスとなってケースごとの葛藤を良くも悪くも解消してきたからであり,それが課題を覆い隠してきたのである。ブラックボックスはその葛藤を吸収していくうちに多くの歪みをため込む。その典型はビンダーの三分類である。精神鑑定のブラックボックスはパンドラボックスになる前に開放するべきである。
詳細
Opening the black boxes of forensic psychiatric evaluations and criminal responsibility decision process
岡田 幸之
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野