臨床精神医学第45巻第8号

統合失調症の陰性症状:症状の理解と治療法開発に向けた展開

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  • 兼子 幸一(鳥取大学)
  • 発行日:2016年08月28日
  • 〈抄録〉
    統合失調症の陰性症状は,長期的転帰に強い影響を及ぼすにもかかわらず,陽性症状に比べて症状の構造や病態の理解が遅れ,効果が実証された有効な治療法も存在しない。しかし,近年,陰性症状群が,主に意欲・発動性の障害avolitionと表出の貧困diminishedexpression の2因子から成る構造を取ることが明らかになり,この2因子に含まれる症状を含み,病態研究や治療法の効果判定での有効性が期待される新たな評価尺度の開発につながった。一方,脳機能画像を中心とする脳科学は,特に社会機能に対する影響が強い意欲・発動性の障害が,報酬予測,価値表象の形成,報酬とそれを得るための労力の計算や目的指向的行動のプラニングなどの脳内報酬系のさまざまな機能障害によって生じるという仮説を生み出した。また,疾患と日常体験の相互作用から生じる「どうせ何をやってもうまくいかない」という非機能的信念が陰性症状や社会機能障害と関係するなどの知見が蓄積しつつある。これらをふまえて,生物学的治療だけでなく,当事者の価値や希望を取り入れるとともに,非機能的信念を和らげていく新たな治療法の開発が期待される。

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Negative symptoms of schizophrenia: Structures and relationships with cognition and social functioning
兼子 幸一
鳥取大学医学部医学科精神行動医学分野