臨床精神医学第47巻第7号
統合失調症の背後にあるトラウマに気づく
電子書籍のみ
- 金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター)
- 発行日:2018年07月28日
- 〈抄録〉
児童期虐待などのトラウマ体験が後年の統合失調症などのPTSDを増加させることには一定の知見が得られている。統合失調症患者の中でのトラウマ被害の割合は一般人口中よりも高率であり,統合失調症とその前駆状態にあることは,対人暴力被害の悪意への敏感さを増加させ,PTSDの発症を促すとされる。ただし両疾患が相互にリスク要因となる正確な経路は不明である。統合失調症が疑われたときのPTSD診断は困難となりやすく,PTSDの再体験症状が精神病的色彩を帯びたときの鑑別は重要である。統合失調症が疑われたときにトラウマ体験についての情報を見落とさない注意が必要である。統合失調症に併発したPTSDの治療研究は増加しており,トラウマ焦点化認知行動療法の適用が試みられている。
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Schizophrenia and trauma
金 吉晴
国立精神・神経医療研究センター