肝胆膵第72巻第5号
血液透析患者のかゆみに対する,κ(カッパ)受容体作動薬ナルフラフィン(レミッチ®)の作用機序
電子書籍のみ
- 熊谷 裕生,他(防衛医科大学校)
- 発行日:2016年05月28日
- 〈要旨〉
維持血液透析患者や保存期慢性腎不全患者のかゆみの成因として内因性オピオイド・ペプチド系に注目してきた.わたくしどもの臨床研究の結果から,「μ(ミュー)・ペプチドと受容体はかゆみを誘発し,κ(カッパ)受容体の活性化はかゆみを抑制する」という仮説を立てた.そこで,全国337例のかゆみの強い血液透析患者を対象とするランダム化前向き二重盲検試験を行い,東レ株式会社が開発したκ受容体作動薬ナルフラフィン(2.5μgおよび5μg)を14日間内服させた.visual analogue scale(VAS)で表されるかゆみの強さは,プラセボでも15 mm低下したが,ナルフラフィンにより23 mmと,プラセボと比較して有意に低下した.13年以上にわたる臨床試験の結果が評価されて,ナルフラフィン(レミッチ® 2.5μgソフトカプセル)は2009年1月に厚生労働省により認可され,3月から発売された.2016年3月において,血液透析患者2万3,000人に投与されており,80%の患者においてナルフラフィンは著明にかゆみを抑制している.高カリウム血症の治療薬ケイキサレート®・ドライシロップやアーガメイト®は,ナルフラフィンを吸着して便へ排泄させてしまうので,それらの薬剤とナルフラフィンは2時間くらい離して内服する必要がある.
詳細
Mechanisms of kappa receptor agonist, nalfurafine (Remitch®) for reducing itch in hemodialysis patients
熊谷 裕生*1 江畑 俊哉*2 髙森 建二*3 中元 秀友*4 鈴木 洋通*5
*1防衛医科大学校腎臓内分泌内科
*2ちとふな皮膚科クリニック
*3順天堂大学名誉教授・皮膚科学特任教授
*4埼玉医科大学総合診療内科
*5医療法人沖縄徳洲会武蔵野徳洲会病院