肝胆膵第92巻第6号
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- 特集/胆汁酸–臓器連関のkey player
- 発行日:2026年06月28日
- 〈企画趣旨〉
胆汁酸は長らく肝臓研究の主要テーマでしたが,ウイルス性肝炎が主流となるにつれ相対的に注目度は下がっていました.1999年,槇島らが胆汁酸受容体FXRを同定したことが転機となり,胆汁酸が単なる脂肪・脂溶性ビタミン吸収のための界面活性物質ではなく,シグナル分子として多様な生体機能を制御することが明らかになりました.肝臓で合成された一次胆汁酸は腸内で細菌叢の増殖・構成に影響し,腸内細菌は脱抱合・脱水酸化を介して一次胆汁酸を二次胆汁酸へと変換します.腸肝循環で肝に戻った二次胆汁酸は,肝細胞のみならず類洞内皮細胞,クッパー細胞,マクロファージ,Tregなどの免疫細胞に作用し,さらに神経やリンパを介して他臓器へもシグナルを伝達します.dysbiosisに伴うleaky gutは,脂肪性肝炎,原発性硬化性胆管炎,肝硬変,肝細胞癌など多様な肝疾患の発症・進展に関与すると考えられています.すなわち胆汁酸は「Gut–Liver Axis」の中核分子であり,胆汁酸関連分子を標的とする新規治療の開発が進んでいます.近年は米国肝臓病学会で胆汁酸を主題としたBasic Science Symposium(2023年)が開催され,2025年9月には日本肝臓学会International Liver Conferenceでも胆汁酸が主要テーマとなります.本特集では,胆汁酸をシグナル分子/臓器連関のキープレイヤーとして捉え,基礎から臨床まで最先端の知見と治療展望を総合的に紹介します.
詳細
〈目次〉
〔巻頭言〕胆汁酸〜腸内環境と代謝・老化をつなぐ共通言語………東京医科大学茨城医療センター 池上 正
Ⅰ.基礎–胆汁酸代謝調節機構,in vitroモデル,動物モデル
核内受容体による脂質・胆汁酸代謝の調節機構………日本大学 石澤 通康,他
ヒト型胆汁酸マウスの樹立………東京医科大学茨城医療センター 本多 彰,他
ヒト型胆汁酸マウスを用いた胆汁うっ滞動物モデルの作成………東海大学 鶴谷 康太,他
胆管の再構成および疾患機序の解明を目指したオルガノイド研究………東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター 谷水 直樹
Ⅱ.胆汁酸関連疾患の病態解明と治療の進歩
胆汁酸代謝異常症………順天堂大学 齊藤 寛貴,他
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)………東京大学 松山 紘也,他
アラジール症候群および胆道閉鎖症の診断と治療………筑波大学 今川 和生
胆汁酸代謝からみたPBC・PSC………帝京大学 田中 篤
MASLDにおける胆汁酸調節異常………横浜市立大学 岩城 慶大,他
胆汁酸代謝とB型肝炎ウイルス感染………愛知医科大学 伊藤 清顕,他
Ⅲ.臓器連関
腸内細菌による胆汁酸の抱合・脱抱合代謝と腸–臓器連関
−フレイル・老化との関連−………京都府立医科大学 内藤 裕二,他
腸–肝–脳連関における胆汁酸の役割………慶應義塾大学 中本 伸宏
胆汁酸の免疫細胞への作用………大阪公立大学 神谷 知憲,他
〔座談会〕胆汁酸研究の進歩
(司会)加川 建弘(東海大学)/市田 隆文(東京IMGクリニック)/
本多 彰(東京医科大学茨城医療センター)/乾 あやの(済生会横浜市東部病院)