リウマチ小読本
電子書籍のみ
- 著者:西野仁樹/編集協力:田中栄,桃原茂樹,仲村一郎
- 発行日:2020年06月01日
- 序 文
関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)の患者さんは勉強しないと診てはいけないのでしょうか?
RAの教科書は分厚いテキストだったり,逆に診断基準の表だけを載せているような薄いハンドブックなどか,どちらかであることが多いようです。多彩な患者を目の前にする臨床現場では,診断基準のYes Noだけでは割り切れないグレーな症例にしばしば遭遇します。だからといって厚い教科書を最後まで読み通すことは現実的ではありません。完全武装しないと“RAを診てはいけない”のかと思うと,なんだかめげてしまいますね。
昔話をすると,著者も準備を十分に整えてからRAの外来をはじめたわけではありません。いきなりRA外来に放り出され,それまでの乏しい知識を総動員しても足りず,隣のブースに駆け込んで教科書を調べたり,ベテランの先輩医師に助けを求めたりといった,悪夢のような年月を経験しました。そこで若い先生方が同じ轍を踏まないですむ一助になればと,小さな読み物をまとめることにしました。
近年,メトトレキサートのRAへの適応拡大・成人用量増量承認,生物学的製剤の普及,targeted synthetic DMARDsの登場によりRA治療のパラダイム・シフトが起こり,RA患者さんの病像,治療目標は大きく変化しました。著者が医師になった頃に教わったことの多くは,この30年の間に修正を余儀なくされています。そこでその歴史を踏まえ,初学者のための読み物としてこの本を書きました。ですから,本書の基本姿勢は現代RA学のトレンドに準じたミニマム・リファレンスとして機能することです。しかし,グレーゾーンの患者を目の前にした時の自分自身の疑問とためらいが,あちらこちらに加筆されています。読者のみなさんがこの独り言のようなためらいや疑問にうなずき,もしくは異を唱え,遠くない将来これらの問題に明解な答えを出してくれることを心から期待しています。
それではRAの世界へようこそ!
Bon Voyage !
詳細
目 次
序文 西野仁樹
第1章 RAを見つけよう!
定義
RAって,どんな感じの病気?
第2章 RAの歴史
第3章 RAをどう疑い,どう診断するのか
どのようにして疑うか
典型的な局所症状・変形
症状がわかったら,次はどうしてみつけますか
まずは患者さんとお話を! なにを聴けばいいの
関節の診察法のABC
では,いよいよ各論に入りましょう
第4章 RAの分類基準
なぜ診断基準でないのか
第5章 鑑別診断のABC
総論
各論
そのほか,鑑別が必要な疾患
リウマチ性疾患のシステマティック・レビュー
第6章 検査のオーダーをしよう!
検査を忘れてはいけない!
検査結果を見逃してはいけない!
検査結果を信じすぎてもいけない!
必須検査項目
関節炎だから,炎症がある!
第7章 画像検査
画像検査
MRIの光と影
MRIの基本的撮影法と所見
MRIの光の部分
MRIの影の部分
CT検査
超音波検査
超音波検査のPros and Cons
安易にPower-dopplerに頼らない
まずはB-modeに習熟しよう
単純X線像の診かた RAの単純X線像の特徴
第8章 画像評価法
X-P Grading System
Scoring methods私論
第9章 患者さんはどのくらい悪いのか
活動性と重症度の評価:疾患活動性
患者さんはどのくらい動けるの? 重症度(機能障害)の評価
第10章 RAの予後予測
RAの予後予測
第11章 治療戦略
現在のCommon agreements
欧米では本当にこの通りやっているんだろうか
第12章 薬物療法
非ステロイド系鎮痛消炎剤Non-steroidal Anti-Inflammatory Drugs(NSAIDs)
第13章 薬物療法 副腎皮質ステロイドホルモン
第14章 薬物療法
疾患修飾性抗リウマチ薬Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs(DMARDs)
csDMARDs総論
csDMARDs各論
併用療法
第15章 薬物療法 tsDMARDsと生物学的製剤
第16章 薬物療法 Biologics(bDMARDs)RA no longer defines my life, I define my life!
抗TNF-α阻害薬
非抗TNF-α阻害薬
副作用
どのような患者さんに使うのか
第17章 日常診療における関節保護
はじめに
実際は!?
運動の話
第18章 手術的治療
手術法総論
データベースは何を語るか
-データベースからみたRA整形外科手術―
手術適応私論 手術適応はどう変わるのだろうか─イントロダクション
新たな覚悟の問題
手術適応各論
各関節の手術の適応とタイミング
下肢手術のタイミング
頚椎の手術
リウマチ内科医に知ってほしい手術のタイミング