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「肝胆膵」(77巻2号・2018年8月号)
特集/急速に変貌する肝細胞癌の薬物療法2018 Update

「肝胆膵」(77巻3号・2018年9月号)
特集/慢性炎症から肝胆膵癌にいたるランドスケープ

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 76巻3号(2018年3月号) 特集/診療ガイドライン最新版による膵癌診療アップデート
定価(\)本体 3,100+税 送料(\) 200


編集後記

 今回の特集は第3版の2013年版から3年ぶりに改訂された第4版の膵癌診療ガイドラインを取り上げた.その心は「科学的根拠に基づく」という冠を削除してGRADEシステムの手法を加味されたということで,今までの改訂とプリンシプルにおいて異なると考えたからである.
 エビデンスは研究デザインで決定されるエビデンスレベルと研究結果から評価される.ここで筆者の一つの懸念を述べる.それはエビデンスレベルが高いことは臨床的インパクト(ハザード比で表現される研究結果と考え得る)の高いことを意味しないが,エビデンスレベルが最重要な指標として独走しかねないという懸念である.
 実際の例を挙げる.B剤の生存に与える上乗せ効果を検証する目的でA剤とA剤+B剤の2群間でしっかりしたデザインのもとRCTを行い,MST において5.9か月と6.2か月,わずか10日であるが,有意な差を得たとする.適切なRCTであるので,エビデンスレベルは高い.言い換えればデータの信頼性は高い.ただし,わずか10日間の延命効果にすぎないので筆者流の表現ではエビデンスの強度は低く,臨床を変えてしまうようなインパクトはない.副作用もあり,高額な薬剤とすれば患者さんはその効果には満足できず,エビデンスレベルが高いといわれても受け入れがたいであろう.
 一方,末期肝硬変患者に対して肝移植とベストサポーティブケアを比較すると前者では5年生存率70%,後者では1年生存率20%程度であり,圧倒的に前者が良い.RCTではないので,エビデンスレベルは低いが,エビデンスの強度は高く,臨床現場におけるインパクトは強い.ただし,わが国の移植の現状からfeasibilityには難点がある.多くの経験ある臨床医はエビデンスをこのような形で総合的に判定しているものと思うが,あえて懸念として述べておく.
 GRADEシステムは患者満足度や治療のfeasibilityも加味される手法であり,今回の改訂においては単にエビデンスレベルのみでなくエビデンス総体の評価という表現で,エビデンスの中身を検証している.より臨床に即した改訂であると評価する次第である.
(有井 滋樹)


 

目次

〔巻頭言〕膵癌診療ガイドライン2016年 第7版からみえてくる国際的相違点
      国際医療福祉大学 宮 崎   勝…345
「科学的根拠に基づく」から「GRADEシステム」へ
 「根拠に基づく」から「GRADEシステム」へ  国際医療福祉大学 吉 田 雅 博…349
診 断
 膵癌の診断アルゴリズム  東京医科大学 黒澤 貴志,他…355
 信頼できるリスクファクターとは  東京女子医科大学 清 水 京 子…361
 長期予後が期待できる膵癌の診断はどうするか  JA尾道総合病院 花田 敬士,他…367
外科治療
 切 除 
  治療アルゴリズム−2013年版との相違− 横浜市立大学 澤田  雄,他…373
  本邦のBorderline Resectable膵癌治療の現状  和歌山県立医科大学 岡田 健一,他…379
  腹腔鏡下手術の意義とは  九州大学 大塚 隆生,他…387
  膵癌切除後の経過観察はどのようにするか? −切除後の腫瘍マーカー測定の意義−  東北大学 元井 冬彦,他…393
 補助療法
  切除可能膵癌に対する術前補助療法は推奨されるか −推奨されるとすれば何が望ましいか−  東海大学 中郡 聡夫,他…403
  膵癌の術後補助療法は推奨されるか −推奨されるとすれば何が望ましいか−  静岡県立静岡がんセンター 杉浦 禎一,他…407
局所進行切除不能膵癌に対する非切除治療
 治療アルゴリズム  杏林大学 古 瀬 純 司…411
 化学放射線療法と化学療法の使い分け  関西医科大学 中 村 聡 明…419
 局所進行膵癌に対する放射線治療 −X線,粒子線治療の課題と展望−  山口大学 澁 谷 景 子…425
遠隔転移を有する膵癌治療 
 「推奨の強さ:なし,エビデンスレベル:なし,合意なし」
  このなんとも不思議なステートメントはなぜ誕生したのか  国立病院機構四国がんセンター 石 井   浩…431
支持療法
 切除不能進行膵癌の閉塞性黄疸に対する対処法  順天堂大学 鈴木 彬実,他…437
 切除不能膵癌の消化管閉塞に対する対処法  埼玉医科大学 谷坂 優樹,他…443
緩和療法 
 進行膵癌患者に対する緩和ケア  埼玉県立がんセンター 余 宮 きのみ…449

座談会 “膵癌診療ガイドライン2016年度版の改訂に携わって”…………457
(司会)有井滋樹,山口幸二,奥坂拓志,伊藤芳紀

シリーズ 肝臓の病理形態の理解と診断へのアプローチ(38)
 免疫チェックポイント阻害剤関連肝炎  福井県済生会病院 中 沼 安 二…471

症例報告 巨大な退形成膵癌(破骨型多核巨細胞を伴う)の術後長期無再発生存例
 南砺市民病院 浦出 雅昭,他…475  

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