今後の特集のご案内

「肝胆膵」(75巻4号・2017年10月号)
膵癌研究Cutting Edge−From Carcinogenesis to Metastatic Colonization−

「肝胆膵」(75巻5号・2017年11月号)
特集/臓器間ネットワークからみた肝胆膵の恒常性とその破綻

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 73巻3号(2016年9月号) 特集/がん治療が変わる−免疫チェックポイント阻害剤の与えるインパクト−
定価(\)本体 3,100+税 送料(\) 150


編集後記

メラノーマ,非小細胞肺癌,腎癌と,続々と抗PD-1抗体が医療現場で承認されるに至っている.抗PD-1抗体は癌腫によっては劇的な効果をもたらすものの,それほど効果が期待できず開発が活発でない癌腫があるのも確かである.本誌「肝胆膵」がメインに扱う肝胆膵癌においても同様である.すなわち肝細胞癌については2015年と2016年のASCOの発表ではそれぞれ19%,16%の奏効率と報告され,SD症例を含めると70%の病勢制御率で延命効果もありそうである.さらには,durable responseと表現される,いわゆる効果が長期間持続するという現象は肝細胞癌にも当てはまり,その点でsurvival benefitもありそうである.副作用についても,独特の自己免疫に関係した副作用は出現するが,通常の抗がん剤や分子標的薬に比べると遥かに副作用が少ない.また,C型やB型肝炎のウイルス感染があっても,あるいは肝硬変が併存していたとしても,ほとんどそれに影響を受けず,肝障害の悪化や黄疸・肝不全を招くといった副作用もないということからも肝細胞癌においては極めて有望であると考えられる.一方,胆道癌や膵癌ではこれまでの報告を見る限りは,それほど効果は顕著なものはなく,今後の開発状況を見守る必要がある.肝細胞癌の無効症例や,効果が今のところ顕著ではない胆道癌や膵癌においては,やはり現状の抗PD-1抗体の単剤治療だけでは限界があり,抗がん剤,分子標的薬,他の免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせによる複合治療が必要になってくる可能性が高い.このことは本特集号のなかでさまざまな著者が述べられているとおりである.
殺細胞性抗がん剤の作用機序は癌細胞におけるDNA合成障害であり分子標的薬の作用機序は癌細胞の発生や増殖・進展に関係する分子を標的として阻害することである.その意味で,この二つの治療法は癌そのものに対する治療法であると同時に,正常細胞にも障害を多少なりとも与える.これに対し,免疫チェックポイント阻害剤は免疫細胞の抑制機構(ブレーキ)に働いて,その抑制機構を解除するという間接的機序である.すなわち本来患者さんのもっている免疫細胞自体に働いてもらって癌細胞を攻撃するというものであるため正常細胞に対する障害はほとんどない.癌患者さんは自らの力で癌を治している,とも言える.そういった意味では免疫チェックポイント阻害剤は究極の夢の治療薬であるということが言える.最近この抗PD-1抗体の薬価が高価であるため,医療経済に与える悪影響についての問題が大きく取りざたされている.もちろん,その意味では効果予測のためのバイオマーカーを確立することは間違いなく必須である.この薬剤が広く使われるために現在障害となっている数々の問題点(治療効果予測のためのバイオマーカー探索,医療経済の諸問題,そしてさらに効果を上げるための工夫)が近い将来,解決され,すべての癌治療を担う医療従事者がこれらの免疫チェックポイント阻害剤をできるだけ早く,しかも効果的に患者さんに届けられる日が来ることを切に願う.
(工藤 正俊)


 

目次

〔巻頭言〕新しい免疫療法に思う 浜松労災病院 有 井 滋 樹…313

免疫チェックポイント阻害剤の基礎と現状

免疫チェックポイント阻害剤とはなにか?
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 梅 本 久美子…315

PD-1はこうして発見された 奈良先端科学技術大学院大学 石 田 靖 雅…317

癌免疫チェックポイント阻害療法−抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体− 国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 北 野 滋 久…323

腫瘍免疫微小環境と免疫制御 慶應義塾大学 河 上   裕…333

免疫療法の組み合わせ治療 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター 和田  聡,他…337

抗がん剤・分子標的薬との複合免疫療法 島根大学 原 田   守…347

免疫チェックポイント阻害剤はどのような特徴の癌に効くか −PD-L1発現,TILなどのバイオマーカー− 聖路加国際病院 多田 耕平,他…355

先行する癌腫における治療成績
悪性黒色腫に対する薬物療法の治療成績
医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 石黒  敦,他…361

非小細胞肺癌 近畿大学 林  秀敏,他…369

腎細胞癌 近畿大学 野澤 昌弘,他…375

婦人科癌 京都大学 浜西 潤三,他…381

消化管癌における免疫チェックポイント阻害剤の開発
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 坂東 英明,他…391

肝胆膵癌における開発の現状と期待
肝細胞癌における免疫チェックポイント阻害剤の開発 近畿大学 工 藤 正 俊…401

免疫チェックポイント阻害剤:胆道癌
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 森実 千種,他…413

免疫チェックポイント阻害剤:膵癌 杏林大学 古 瀬 純 司…419

免疫チェックポイント阻害剤の今後の動向
免疫チェックポイント阻害剤の限界と課題 近畿大学 工 藤 正 俊…423

座談会“免疫チェックポイント阻害剤”の基礎から臨床成績および開発動向…………………429

シリーズ 肝臓の病理形態の理解と診断へのアプローチ22
肝細胞腺腫:遺伝子異常,病理形態,発生母地 静岡県立静岡がんセンター 中 沼 安 二…445

シリーズ 知っておきたい稀な肝胆膵疾患12
嚢胞性線維症 名古屋大学 石黒  洋,他…451
 

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