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「肝胆膵」(75巻4号・2017年10月号)
膵癌研究Cutting Edge−From Carcinogenesis to Metastatic Colonization−

「肝胆膵」(75巻5号・2017年11月号)
特集/臓器間ネットワークからみた肝胆膵の恒常性とその破綻

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 70巻3号(2015年3月号) 特集/肝胆膵分野の再生医療・人工臓器
定価(\)本体 3,000+税 送料(\) 150


編集後記

 われわれの体は,たった1つの受精卵から多様に分化した細胞の集合体である.この細胞分化の運命付けには,半世紀以上前に提唱された「ワディントン地形」モデルがしばしば引用される.このモデルでは緩やかに傾斜した丘陵から次第に幾つもの谷が現れ,やがて深い渓谷が刻まれており,幹細胞に見立てた1つのボールが丘の頂上に置かれている.ボール(幹細胞)は,重力に従って「分化」という坂道を転がってゆき,それぞれの谷へと流れ落ち 各々成熟細胞へと多様な分化を遂げる.英国の発生生物学者コンラッド・ワディントン(Conrad H. Waddington, 1905〜1975)は,このゲノム変異を伴わないプロセス,すなわちエピゲノムの概念を丘陵渓谷の風景イメージとして描いたのである(Waddington’s epigenetic landscape).

 ワディントン地形の坂道を登ることができる方法は受精における配偶子形成であり,核移植によるリプログラミングである.そして現在,iPSという新しいリプログラミングの成功によって,細胞分化の運命を自在にコントロールする大きな夢がわれわれに与えられた.ワディントンの谷から丘へと自由に登り降りすることができれば,再生医療が現実となる可能性は遥かに拡がるであろう.しかしながら,どこまで登り,どのように降りるのかは未解決であり,その過程は各臓器や組織によって異なる筈である.本誌の編集に携わり最初に企画する特集として「肝胆膵分野の再生医療と人工臓器」を選んだのは,この領域特有のテーマを読者とともに捉えたいという熱い思いからである.肝胆膵における発生・再生の研究,そして治療応用の現状と課題について,各分野のエキスパートに執筆をお願いした.再生医療は,わが国の先端医療開発の中でも最も期待されている分野の1つである.まさに陵谷遷貿の現代において,本特集が肝胆膵の新しい医学と医療を進める一助となれば幸いである.

(田中 真二)


 

目次

〔巻頭言〕肝胆膵分野の再生医療・人工臓器 山口大学 坂井田   功…333



 肝発生 東京医科歯科大学 宮村 憲央,他…335

 肝再生における細胞動態―再生機構の理解から再生不全の病態解明へ―

   東京大学分子細胞生物学研究所 松田 道隆,他…343

 iPS細胞を用いた機能的なヒト肝臓の創出 横浜市立大学 谷口 英樹,他…353

 ダイレクトリプログラミングによる肝細胞の作製 九州大学 鈴 木 淳 史…361

 細胞治療による肝再生療法の現状と今後の展開 新潟大学 土屋 淳紀,他…369

 バイオ人工肝臓へのチャレンジ―革新的バイオマテリアルとしての

  カドヘリンマトリックス工学の応用―

    国際科学振興財団再生医工学バイオマテリアル研究所 赤池 敏宏,他…375



 胆管発生 静岡大学 塩 尻 信 義…385

 胆管ステム細胞 金沢大学 佐々木 素 子…395

 肝細胞の細胆管化生と肝内胆管系のリモデリング

   旭川医科大学 西川 祐司,他…405

 胆管発生異常 東京都立駒込病院 神澤 輝実,他…417

 肝胆膵手術における理想的胆管再建法―Tissue engineeringによる

  胆管再生研究からの検討―

   埼玉医科大学国際医療センター 宮澤 光男,他…425



 膵発生 熊本大学 坂野 大介,他…433

 膵再生 神戸大学 南   幸太郎…441

 膵組織再生 東京大学医科学研究所 宮本 竜之,他…447

 iPS細胞を用いた機能的膵組織誘導の展望

   京都大学iPS細胞研究所 佐々木 勉,他…455

 バイオ人工膵臓 京都大学再生医科学研究所 角   昭一郎…461

 人工膵臓マシン 高知大学 北川 博之,他…467



座談会“肝胆膵分野の再生医療・人工臓器” 473





シリーズ 知っておきたい稀な肝胆膵疾患B

 ポンペ病 済生会横浜市東部病院 乾 あやの,他…485

シリーズ 肝臓の病理形態の理解と診断へのアプローチD

 肝線維化 静岡県立静岡がんセンター 中沼 安二…493  

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