今後の特集のご案内

「肝胆膵」(75巻4号・2017年10月号)
膵癌研究Cutting Edge−From Carcinogenesis to Metastatic Colonization−

「肝胆膵」(75巻5号・2017年11月号)
特集/臓器間ネットワークからみた肝胆膵の恒常性とその破綻

バックナンバーはこちら



 第64巻3号(2012年3月号) 特集/肝胆膵領域のEBM Update 2012
定価(\)本体 2,800+税 送料(\) 150


編集後記

 EBMという言葉を初めて聞いたのは,実は卒業してしばらくしてからのこと.当時は,まだ肝臓病学の中でどのようにこの耳慣れない言葉が入ってくるのか具体的なイメージを持ち合わせていなかった.実際のところEBMという概念が正式にでてくるのは1991年のGuyattのACP Journal Clubに発表した論文に端を発し,96年のSackettらの著書によりその評価が確立したものであるらしい.もちろん,個々の医学分野でEBMがいかに普及し取り入れられたかについてはさまざまな経緯があるが,肝胆膵の診療領域にも影響を大きな影響を及ぼした.実際にはEBMを診療現場に還元するには良質なガイドラインが必要であるが,その作成には大きな努力と労力が必要で,簡単なものではない.これまでも,いくつかのガイドラインが作成されてきたが,その根拠となる論文の選択が適切でない場合は全く逆の結論を推奨するということにもなってしまう危険性もある.比較的身近なところでは,C型の慢性肝炎,とりわけ肝硬変についてのインターフェロンの長期投与について,これまで2008年にHALT-C study groupからNew England J Medに肝硬変に起因する合併症を減らさないとされ,よって勧奨しないとするガイドラインがでたが,2011年にGastroenterologyに発表された観察期間を延長した同一の試験での結果は肝硬変での肝細胞癌のリスクが低くなるというものであった.このほか肝細胞癌に対するTACEの有効性など,いろいろな疾患でその評価が変わる事例がある.したがって,あるときのEBMを用いたガイドラインが未来永劫に正しいものでなく,その都度解釈が本当に正しいのかという真贋を自ら極めるぐらいの目でみる必要がある.今回,執筆された先生や,座談会でご発言いただいた先生方は,肝胆膵領域でのEBMについて,その歴史的な経緯や注意すべき点に極めてご造詣が深い先生方ばかりである.本号の特集の内容が正しいのも歴史的には数年であろうが,EBM自体は本来どんどん進化していくものである.次回同じような特集が組まれるときに,現在のEBM自体がどの程度残るのかということも楽しみである.

(上野 義之)


 

目次

〔巻頭言〕EBM雑感

   東京医科歯科大学 有 井 滋 樹…295

肝臓領域のEBM

 劇症肝炎(急性肝不全) 岩手医科大学 滝川 康裕,他…297

 B型慢性肝炎治療のEBM 千葉大学 今 関 文 夫…309

 C型肝炎治療のEBM:テラプレビル治療

北海道大学 坂 本 直 哉…319

 肝硬変の合併症 奈良県立医科大学 福 井   博…327

 原発性胆汁性肝硬変

  −何か新しい考え方が存在するのか?−

長崎医療センター 石橋 大海,他…335

 原発性硬化性胆管炎

  −移植以外に何ができるか?− 帝京大学 田 中   篤…343

 肝細胞癌

  −局所・外科治療・移植そろそろ結論は?−

東京大学 建 石 良 介…349

 転移性肝癌

  −本当に根拠があるのは何か?− 大阪大学 友國  晃,他…357

 肝移植 京都大学 上 田 佳 秀…367

胆道領域のEBM

 胆石症 −腹腔鏡下胆嚢摘出術にどこまでこだわれるのか?−

   名古屋大学 伊神  剛,他…373

 胆管炎に対する胆道ドレナージのタイミングと方法

帝京大学 天野 穂高,他…379

 胆管腫瘍 −どの治療にどこまでEBMが存在するのか−

   藤田保健衛生大学 堀口 明彦,他…387

膵臓領域のEBM

 急性膵炎の診断と治療の変遷

  −昔と今で何が変わったのか− 仙台医療センター 武 田 和 憲…395

 慢性膵炎 −そもそも治療は存在するのか− 東北大学 廣田 衛久,他…405

 自己免疫性膵炎EBM-2012

  −疾患概念はいかに整理されて,治療法はいかに変化したか?−

    関西医科大学 岡崎 和一,他…415

 のう胞性膵腫瘍 東京大学 多 田   稔…425

 膵癌−現状でEBMが存在する治療法は?− 千葉大学 大塚 将之,他…431



座談会“肝胆膵領域のEBM Update 2012”

上野義之/小俣政男/伊藤鉄英/宮崎  勝…437  

バックナンバーはこちら