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 第60巻5号(2010年5月号) 特集/性差による肝胆膵疾患の臨床,病態,治療効果のDiscrepancy
定価(\)本体 2,800+税 送料(\) 150


編集後記

 性差医学の研究はいろいろな分野で行われているが,その内容は最終的には女性ホルモンによる病態修飾,治療修飾などに結論が導かれている.

 生まれつき異なる男と女が同じ肝炎ウイルスに感染しても,感染後の経過が異なり,例えば肝細胞癌は圧倒的に男性に多い.このような事実を研修医に「なぜ」と問われて,明確に解説できる肝臓専門医は何名いるだろうか.肝胆膵分野で多くの疑問があった.なぜ,原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎は女性に多いのか.肝硬変から肝細胞癌が出現する頻度は極めて高いのに,なぜ肝細胞癌は男性に多いのか.女性ホルモンが発がんを抑制するとするならば,男性は肝硬変になると不活性化機序の低下で女性ホルモンが優位となり,女性化するではないか.それなのに「なぜ,男に肝細胞癌が多いのか」.なぜ女性の場合,同じ量のアルコールを摂取しても,男性に比して短期間で肝硬変に移行するのか.肝移植ではなぜ女性のレシピエントの生存率が高いのか? そして,究極の質問は「なぜ,女性の方が長生きするのか?」である.この答は「なぜ,女性の方がこんなに強いのか?」に当てはまる基本的な疑問でもある.

 今回の特集は,肝胆膵分野での性差の実態とその病態をいかに考えるかがテーマで,その道に詳しい先生方に教えを請い,適切なテーマと執筆者名を推薦いただき,当方がアレンジしたわけである.各論はもちろん,巻頭言から座談会まで,なかなか読みごたえのある特集が組めたと自負している.しかしながら,まだまだ単純に女性ホルモンの作用だけでこれだけの性差別変化は簡単に説明がつかないものと思われる.性差医療をもう少し違った角度から,それこそ「せいさ(精査)」しなければならないと思われた.

 すなわち,酒,たばこなどの生活習慣が男女で異なるというが,現代社会ではほぼ同じように若い,いやいやおばちゃん連中は男顔負けで吸って飲んでいるではないか.女性は閉経後,ホルモンバランスから男と同じになるのではないか.それなのになぜ病態,治療効果が異なるのだろうか.

 座談会での二人の女性ご自身の赤裸々な体験も含めて,改めて性差医療の複雑さが身にしみて分かった次第である.           (市田隆文)


 

目次

〔巻頭言〕 肝胆膵疾患と性差 東京女子医科大学 白 鳥 敬 子…741

性差と各種肝疾患

 ウイルス性肝疾患における性差

  B型肝炎における性差 虎の門病院肝臓研究室 小 林 万利子…743

  C型肝炎における性差 埼玉医科大学 名 越 澄 子…751

 性差からみたNASH/NAFLD 東京女子医科大学 徳重 克年,他…759

 性差からみたアルコール性肝疾患 永寿総合病院 堀 江 義 則…765

 性差からみた自己免疫性肝疾患 虎の門病院肝臓センター 鈴 木 義 之…775

 性差からみた薬物性肝障害 帝京大学 滝 川   一…783

 肝がんの性差をめぐって 大阪市立十三市民病院 岡   博 子…787

 肝移植と性差 徳島大学 宇都宮  徹,他…793

性差と胆道疾患

 性差からみた先天性膵胆道奇形 東京都立駒込病院 神澤 輝実,他…801

 性差と胆石症 仙台市医療センター 越田 真介,他…807

 胆嚢癌における性差とリスクファクター 金沢大学 中川原寿俊,他…813

性差と膵疾患

 性差からみた急性膵炎・慢性膵炎 東北大学 正宗  淳,他…819

 性差からみた自己免疫性膵炎 関西医科大学 岡崎 和一,他…827

 膵癌と性差 国立がんセンター中央病院 城戸 秀倫,他…833

 性差からみた膵のう胞性腫瘍 東京大学 多 田   稔…839

ホルモン・サイトカインからみた肝発癌機構の性差

 イソフラボン摂取・エストロゲンと肝発癌

   国立がんセンターがん予防・検診研究センター 澤 田 典 絵…845

 IL-6と肝炎・肝発癌 東京医科歯科大学 植山真由美,他…849



座談会“性差による肝胆膵疾患の臨床,病態,治療効果のDiscrepancy”

市田隆文/上野隆登/橋本悦子/岡博子……………857  

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