編集後記
肝細胞癌から患者を救うことがわが国の肝臓医の最大の願いであることに間違いない.かって,疫学統計の専門家は2004,5年頃には患者数の減少が見られるとしたが現象は見られず,その後,2014,5年頃と見直されてはいるものの日々多くの肝細胞患者を診るものとしては減ってきたという実感に乏しい.ご承知のように,肝細胞癌の診断には存在診断方としての腫瘍マーカーと局在診断としての画像診断法があり,根治性の高い早期の肝細胞癌の発見には感度と特異性が要求される.PIVKA-IIはLiebmanらがdes-γ-carboxy(abnormal)prothrombinとして最初に報告したものをエーザイ並びに三光純薬が日本発の診断キットとして世界に向けて発売したものであり,特異性の高い腫瘍マーカーとして,今回のHan教授の論文でもお分かりのように世界各地で評価の検討が行われている.今回の特集を企画するにあたっては単に診断能のみならず,PIVKA-IIについての最近の治験を“新しい展開”としてまとめさせていただいた.ご参考になれば幸いある.
さて,編集後記を担当するのは今回が最後である.初代編集委員長であった故市田文弘教授が雑誌「胃と腸」を意識して「肝胆膵」の発刊を決意され,小生に編集委員としてのお声がかかり,その後,ご病気でその任を退かれ二代目の谷川久一名誉教授に引き継がれても肝臓バカの一人として編集に携わってきた.平成19年度,出版社であるアークメディアから編集委員の若返り方針が提案され,谷川久一委員長の辞任とともに小生も辞めることにした.読者の方々には長い間お付き合いいただき衷心より感謝申し上げるとともに,今後ともご愛読願うばかりである.(沖田 極)
目次
〔巻頭言〕PIVKA-Uの新しい展開 小俣 政男
PIVKA-Uの基礎
PIVKA-Uの生化学 森田 隆司
PIVKA-Uと癌細胞特性(代謝面から) 鈴木 宏治
PIVKA-Uの組織発現 中島 収,他
PIVKA-Uと細胞増殖 白羽 英則,他
PIVKA-Uの臨床
PIVKA-Uと測定法 藤山 重俊,他
PIVKA-Uの診断能(AFP,AFP-L3との比較) 建石 良介,他
PIVKA-Uと臨床病態─門脈浸潤との関連において─ 小池 幸宏
PIVKA-Uと治療:内科系 熊田 卓,他
肝細胞癌患者の術後再発予測におけるPIVKA-Uの有用性 吉住 朋晴,他
海外における臨床経験 Clinical experiences of PIVKA-II for the diagnosis of
hepatocellular carcinoma in Korea Kwang-Hyub Han,他
座談会 沖田 極
関谷 千尋
奥田 博明
坂口 孝作
池田 健次