編集後記
◇本特集は,「『うつ』をめぐる精神科と内科のネットワーク」というタイトルとした。うつ病患者は,今では精神科だけでなく多くの身体諸科を訪れる。精神科医としては,このような身体諸科の医師がどのように考えて,どのような対応をしているのかを知っておくことが必要である。このような観点から,本特集では,ほとんどの項目について精神科ではない医師に執筆を依頼した。その結果,精神科の雑誌でありながら,その執筆者の大部分が内科医という極めて異例の構成となった。
◇心療内科,循環器内科,消化器内科,血液内科,内分泌代謝内科,神経内科,老年科の各先生からの論文は,それぞれの診療科の特色をふまえて執筆いただいた論文であり,考え方,対応の仕方,その論述の進め方などにおいて精神科医による論文との違いを読み取ることができて,編集者としても興味深い経験をすることができた。
◇この特集が意図するところは,うつ病患者に対して精神科・身体諸科の共同作業が必要であり,うつ病患者へのよりよいサービス提供のために,今まで以上に密接な共同体制を作り上げたいというものであった。このような実際の試みは石蔵先生による論文に述べられており,全国各地でこのような協力体制が作り上げられていくことを期待したい。
目次
●特集
「うつ」の精神症状と身体症状 宮崎 誠樹・他
「うつ」と身体疾患 千田 要一・他
虚血性心疾患と「うつ」 大原 浩市
消化器内科と「うつ」 阿部 哲也・他
血液内科と「うつ」 計屋由紀子・他
内分泌代謝内科と「うつ」 中野 智紀・他
神経内科と「うつ」 鎌田 智幸・他
老年科と「うつ」 山口 潔・他
「うつ」をめぐる精神科と内科のネットワーク 石蔵 文信
●研究報告
精神障害者小規模作業所の入院防止機能と利用者の就職意欲にかかわる要因の分析 中川 正俊・他
青年期に至るまでImaginary Companionが存続した2例
─その臨床精神医学的特徴について─ 中川 東夫・他
●日本近代向精神薬療法史
精神刺激薬と覚醒剤 風祭 元
●精神科診療/よもやま話
街で発達障害を診る 米田 衆介
●学会印象記
第25回日本社会精神医学会 下寺 信次
●シリーズ/精神医学用語解説
314.小胞体ストレス 工藤 喬・他
315.血管性うつ病 木村真人・他