編集後記 紹介
◇第2世代抗精神病薬が市場に導入されてから15年近くが経ち,これらの薬剤はそれぞれ一定の評価を得て,臨床に定着したように思う。日本での経験が積まれ,薬理作用の研究も進み,導入当初に問題とされある程度解決されたものと,依然として未解決のままに残されているものとがある。従来にはなかったあらたな問題が現れてもきている。広告の文言として紹介されたそれぞれの薬剤の“特徴”は,これまでも何度となく特集で取り上げられてきた。臨床の経験が積まれた現在,これらの“特徴”をどのように理解するのがよいのか。
◇非定型という名称の是非,各薬剤間の臨床的相違と使い分け,明らかになった薬理作用,そして近く臨床への導入が予定されている薬剤について,改めて第2世代抗精神病薬を取り上げることで,これらの薬剤についての理解がさらに深まると思われた。
◇今回の特集は,第2世代抗精神病薬の薬理学的研究に従事して,これらの薬剤の臨床経験が豊富な九州大学精神科の黒木俊秀助教授に立案していただいた。薬理学から臨床までを幅広く見渡せる氏ならではの構成となり,読み応えのある特集となった。感謝を表したい。(KS)
目次
●特集
第2世代抗精神病薬とは何か 冨高辰一郎・他
リスペリドン,ペロスピロン,クエチアピン,オランザピンはどこが違うのか 武田 俊彦
第2世代抗精神病薬 vs 低用量ハロペリドール:臨床効果の比較 稲垣 中
第2世代抗精神病薬と認知機能 住吉 太幹・他
セロトニン・ドパミン仮説の現在 黒木 俊秀
ドパミンD2受容体のfast dissociation仮説をめぐって 久住 一郎・他
ドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト─新規抗精神病薬アリピプラゾール─ 菊地 哲朗・他
●研究報告
過食症に対する集団療法の試み─自記式質問票に反映されない治療効果について─ 水田 一郎・他
若年にて発症した薬剤性の褥瘡および脱毛の2症例 堤 淳・他
●短報
薬剤性精神症状を呈したパーキンソン病に対し低用量のolanzapineが有効であった1症例 鈴木 英伸・他
●講演紹介
第1回福岡精神医学研究会講演記録
双極性障害の診断と治療─臨床医の質問に答える─ 神田橋條治
●精神科クリニック/よもやま話
他国と比べた日本の精神科クリニック 窪田 彰
●書評
語り・物語・精神療法 中井 久夫
●学会印象記
第28回日本高次脳機能障害学会総会 石原 健司
●シリーズ/精神医学用語解説
293.精神病発症ハイリスク状態 西田 淳志・他
294.インターネット依存症